小学生のお子さんの頭に、ある日突然、コインのような丸いハゲ(脱毛斑)を見つけた時、多くの親御さんは強いショックを受けるでしょう。これは「円形脱毛症」と呼ばれる症状で、子供の薄毛の原因として最も頻繁に見られるものの一つです。そして、その引き金としてよく挙げられるのが「ストレス」です。円形脱毛症の直接的な原因は、自己免疫機能の異常と考えられています。何らかのきっかけで、体を守るはずの免疫細胞(Tリンパ球)が、健康な髪の毛の根元にある毛包を異物と間違えて攻撃してしまい、その結果、髪の毛が突然抜け落ちてしまうのです。そして、この免疫の異常を引き起こす誘因の一つとして、精神的なストレスが大きく関わっているとされています。大人から見れば些細なことでも、子供の世界には様々なストレスが存在します。新しいクラスへの不適応、友人関係の悩み、いじめ、勉強や習い事のプレッシャー、あるいは、兄弟の誕生や引っ越しといった家庭環境の変化も、子供にとっては大きなストレスとなり得ます。子供は、自分のストレスをうまく言葉で表現できないことが多いため、そのサインが円形脱毛症という身体的な症状として現れることがあるのです。もし、お子さんに円形脱毛症が見られたら、親としてどう対処すればよいのでしょうか。まず、最も重要なのは、お子さんを責めたり、過度に心配する姿を見せたりしないことです。「あなたのせいでハゲができた」と捉えかねない言動は、子供をさらに傷つけ、追い詰めてしまいます。脱毛斑を隠そうと躍起になるのではなく、「大丈夫だよ、また生えてくるからね」と、まずは安心させてあげることが大切です。次に、学校での様子を担任の先生に尋ねたり、お子さんの話をじっくりと聞く時間を作ったりして、ストレスの原因がどこにあるのかを、さりげなく探ってみましょう。そして、必ず皮膚科を受診してください。円形脱毛症は、自然に治ることも多いですが、症状によってはステロイド外用薬や液体窒素療法などの治療が必要になる場合があります。専門医の正しい診断と治療を受けながら、家庭では、子供が心からリラックスできる安心な環境を整えてあげること。それが、円形脱毛症を乗り越えるための、何よりの薬となるのです。