ノコギリヤシは、近年「発毛」や「育毛」への効果が期待され、AGA対策サプリメントの成分として注目されていますが、もともとは別の健康効果で知られてきたハーブです。その代表的なものが「前立腺肥大症の症状緩和」です。前立腺肥大症は、加齢とともに男性ホルモンの影響などで前立腺が肥大し、尿道を圧迫することで、頻尿、残尿感、排尿困難、夜間頻尿といった様々な排尿障害を引き起こす疾患です。ノコギリヤシの果実エキスに含まれる有効成分(脂肪酸やβ-シトステロールなど)には、この前立腺肥大症の症状を緩和する効果があると考えられています。そのメカニズムとしては、まず、AGAと同様に「5αリダクターゼの阻害作用」が挙げられます。前立腺の肥大にもDHT(ジヒドロテストステロン)が関与していると考えられており、ノコギリヤシがDHTの産生を抑制することで、前立腺の肥大を抑え、排尿症状を改善する可能性が示唆されています。また、ノコギリヤシには「抗炎症作用」や「抗アンドロゲン作用(男性ホルモンの働きを弱める作用)」、「平滑筋弛緩作用」などもあるとされ、これらの複合的な働きによって、前立腺の炎症を鎮めたり、尿道の圧迫を和らげたりする効果も期待できます。実際に、ヨーロッパの一部の国では、ノコギリヤシは前立腺肥大症の初期治療薬として承認されており、多くの臨床研究でもその有効性が報告されています。ただし、ノコギリヤシはあくまで前立腺肥大症に伴う「症状を緩和する」ものであり、肥大した前立腺そのものを小さくする効果は限定的であると考えられています。また、重度の前立腺肥大症や前立腺がんの治療には適していません。このように、ノコギリヤシは「発毛」への期待だけでなく、伝統的に中高年男性の泌尿器系の健康維持に役立つハーブとして利用されてきた歴史があり、その効果についても一定の科学的根拠が示されています。もし、排尿に関する悩みがある場合は、自己判断でノコギリヤシを摂取するだけでなく、まずは泌尿器科を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
ノコギリヤシに「発毛」以外の効果は?前立腺肥大症との関連