「まさか、うちの子が薄毛に…」小学生のお子さんの髪が薄くなってきた、あるいは一部分だけ髪が抜けてしまった時、親御さんが抱く衝撃と不安は計り知れません。大人の薄毛、特にAGA(男性型脱毛症)に関する情報は溢れていますが、子供の薄毛は原因も対処法も全く異なります。まず理解すべきなのは、小学生の薄毛のほとんどは、AGAとは無関係であるということです。AGAは、男性ホルモンの影響で思春期以降に発症する進行性の脱毛症であり、小学生で発症することは極めて稀です。では、子供の薄毛の主な原因は何なのでしょうか。最も多い原因の一つが「円形脱毛症」です。ストレスが引き金になることが多いとされていますが、その本質は自己免疫疾患であり、免疫細胞が誤って自身の毛根を攻撃してしまうことで、コインのような円形の脱毛斑が突然現れます。単発で終わることもあれば、多発したり、頭部全体に広がったりすることもあります。学校生活での友人関係や勉強の悩み、家庭環境の変化といった、子供が感じる様々なストレスが誘因となり得ます。次に考えられるのが「牽引性脱毛症」です。これは、毎日同じ場所で髪を強く結ぶことで、毛根に物理的な負担がかかり続け、その部分の髪が抜けたり、生えにくくなったりするものです。特に、ポニーテールやきつい編み込みをしている女の子によく見られます。また、自分で髪の毛を抜いてしまう「抜毛症(トリコチロマニア)」も、小学生に見られることがあります。これは、不安やストレスを紛らわすための癖のようなもので、不自然な形の脱毛斑や、毛の長さがまばらになるのが特徴です。その他にも、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎といった「頭皮の疾患」が原因で、炎症によって髪が抜けてしまうケースや、稀ですが、甲状腺機能の異常といった「内科的な病気」が隠れている可能性もあります。小学生の薄毛は、大人のそれとは異なり、多くの場合、原因を取り除けば改善する可能性があります。まずは慌てず、原因を特定するために、皮膚科や小児科の専門医に相談することが、解決への最も重要な第一歩となります。